« 2018年10月 | トップページ | 2018年12月 »

2018年11月30日 (金)

皮膚病雑記帳 No.219

当帰飲子

11月も下旬になってかなり寒くなってきました。近頃は皮膚が乾燥して痒くなって来院されるお年寄りの患者さんが多くなりました。特に下腿に病変がみられる人が多いようです。下腿は皮膚が薄い部分なので特に乾燥性の湿疹が生じやすい部位です。このような病態を老人性皮膚瘙痒症と呼びます。原則的には痒みのみで皮疹がない場合を皮膚瘙痒症と呼びますが、2次的に湿疹が生じる場合も含まれます。

ところで老人性皮膚瘙痒症によく処方される漢方薬に当帰飲子(とうきいんし)があります。当帰飲子は四物湯をベースにし、その構成生薬の当帰や川芎の血液循環、防風の発汗促進、芍薬の鎮静の各作用は瘙痒に効果的です。補血剤で表寒虚証の場合に処方すると有効です。なお温清飲は皮膚の色つやが悪く、渋紙色の場合に用います。清熱剤で裏熱虚証で、四物湯と黄連解毒湯を合方した方剤です。しかしこれらの処方を用いて一時的に症状が改善しても再燃することがあります。再燃を防ぎ、治癒へ導くためには体質を改善する本治(体質を改善すること)としての治療が必要となります。本治の処方には八味地黄丸、真武湯、桂枝茯苓丸などがあり、体の状態を診て処方する必要があります。

大塚敬節先生の弟子で現代の漢方医学会の重鎮の一人である松田邦夫先生は、著書、『症例による漢方治療の実際』のなかで、老人性皮膚瘙痒症治療の失敗談を書かれています。父親の友人のある著名な日本画家が、何年にも及び老人性皮膚瘙痒症を患っていて、父親に頼まれ治療することになりました。師匠の大塚敬節先生が老人性皮膚瘙痒症に当帰飲子をよく使っていたので、これだと思って処方したがまったく効かないばかりか返って悪化してしまいました。後ほどその画家は実証であることが判って、処方の誤りに気づいたとのことでした。当帰飲子は虚証の人に使う処方だったわけです。失敗談をテキストに書かれた松田邦夫先生の心の広さを感じました。

よく老人性皮膚瘙痒症に処方される当帰飲子ですが、証を見極めて使うことが重要です。

 

2018.11.30記載

 

« 2018年10月 | トップページ | 2018年12月 »

最近のトラックバック

2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
無料ブログはココログ