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2017年8月30日 (水)

皮膚病雑記帳No.204

真武湯の皮膚疾患への応用

 7年前の2010年8月にこのブログで真武湯について記載しました。変わらず私の好きな頻用処方の一つです。

 真武湯は新陳代謝の低下している人のさまざまな疾患に用いられます。胃腸疾患、高血圧、神経衰弱、リュウマチ、老人性瘙痒症など、合計17の疾患に保険適応があります。真武湯が数あるエキス剤のなかで最も多くの種類の疾患に処方されています。

真武湯の構成生薬は茯苓(ぶくりょう)、芍薬(しゃくやく)、蒼朮(そうじゅつ)、生姜(しょうきょう)、附子(ぶし)の5味のみで、生薬数が少ないので、効果は早く現れます。茯苓、芍薬、蒼朮は水分代謝を改善し、生姜、附子は体を温めます。

 真武湯が皮膚疾患に処方されることは少ないようですが、結構よく効きます。真武湯が奏効したアトピー性皮膚炎、手の湿疹、尋常性痤瘡の症例を紹介します。

 
 アトピー性皮膚炎の症例は47歳、男性です。顔面、躯幹、四肢に鱗屑を伴った紅斑を認め、アトピー性皮膚炎と診断。抗アレルギー剤とステロイド外用剤、標治(現在ある症状に対する治療)として消風散、または温清飲など、本治(症状の元となっている体質を変える治療)として瘀血を認めたため、桂枝茯苓丸を処方しましたが、ある程度軽快するもしばしば増悪していました。ある日の診察時に腹壁を触れてみたところ、冷えを認め、桂枝茯苓丸に変えて真武湯を処方しました。1ヶ月で腹壁の冷えは少し改善し、2ヶ月目には皮疹の改善が認められ、特に顔面の紅斑がかなり消失し、健常な皮膚が認められるようになりました。

手の湿疹の症例は55歳、男性。乾燥性の手湿疹を認め、抗アレルギー剤、ステロイド外用剤、5%サリチル酸ワセリン混合軟膏などを処方しましたが、あまり改善傾向がみられませんでした。初診時からほぼ1年経過し、冬場になったためか、手の乾燥傾向が目立つようになりました。舌診にて歯圧痕を認め、腹診にて下腹部の冷えを認めたため、真武湯を処方しました。真武湯処方後、約1カ月でかなり乾燥傾向と皮疹が改善しました。また舌の歯圧痕が少し改善していました。その後良好な経過が継続していましたが、真武湯の効果を確かめるために一旦、真武湯を中止したところ乾燥傾向が増加し、再び投与したところ改善しました。現在も治療を継続しています。なお随時腹診をした際に真武湯に特有の寺師の圧痛点を確認することができました。

尋常性痤瘡の症例は31歳、女性。両頬部に散在性の紅色丘疹を認め、尋常性痤瘡と診断しました。抗生剤、抗菌剤の軟膏を処方しましたが、軽快と増悪を繰り返していました。初診から4ヶ月目に舌診で歯圧痕を認め、また手足が冷えることを目標にそれまでの西洋薬に加えて、真武湯を処方しました。さらに1週間後には生理前に皮疹が増加するとのことで、桂枝茯苓丸加薏苡仁を処方し、真武湯と併用しました。以後尋常性痤瘡の皮疹および顔面の皮膚の乾燥傾向が改善し、手足が冷えることが無くなり、また以前からの手湿疹が発症しなくなりました。

真武湯は裏寒虚証で、腹壁の冷え、舌の歯圧痕、皮膚の乾燥傾向などを目標に、本治として有効な処方でもっと皮膚疾患に処方されてもよい方剤と思われます。

 

2017.8.30記載



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