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2016年5月30日 (月)

皮膚病雑記帳 No,189

●小説の中の漢方

 小説を読んでいて皮膚病に出会うことがあります。最近、野坂昭如の『水虫魂』という小説を読みました。タイトルからしてすでに皮膚病がついてしまっています。『水虫魂』は主人公、寺川友三が昭和30年代前半,「水虫」とあだ名された貧相な面構えと、ひがみっぽい性格ながら,草創期の広告・放送業界をたくみに遊泳して芸能プロダクションの社長,出版社の経営者にのしあがっていきます。金もうけに専念しつつ「焼跡ランド」の構想を練る男の姿を通して,戦後の繁栄の虚しさと焼跡・闇市への郷愁を描く自伝的長編小説です。最後に友三が、どうせ人間なんか、地球に寄生している水虫みたいなもんやで、あんまり地球壊してしもては元も子もない、ほどほどにはびこるのがいちばんと述べているのが印象的でした。

その小説にたまたま漢方薬が登場します。性的不能者に対する治療器具を扱っている怪しげな店に友三が訪れたところ、店の主人から漢方薬を勧められます。「漢方をためしてみんしゃったか」、漢方がわからずキョトンとしていると、海坊主(店の主人)は戸棚から袋を出して、中の薬をとり分け、その臭いにようやく漢方薬とわかったが、容貌に似ず親切な男らしく、友三に同情して、さらにたしかな効き目の薬を調合するらしい。家に帰って、ガスにやかんをかけて、教わった通りに漢方薬を煎じ、ふと母を思い出す。長火鉢の銅壺(どうこ)で、お袋もよう血の道の薬を煎じとった。玄関入ったとたんにその臭いが鼻をつき、こっそり飲んでみたらおそろしく苦い。なお血の道とは産褥(さんじょく)時・月経時・月経閉止期などの女性に現れる頭痛・めまい・寒け・発汗などの諸症状のことです。


 
 昭和30年代は精力剤の一つとして漢方薬が評価されていたのかもしれません。『水虫魂』に登場する漢方薬は徳川家康が飲んでいた八味地黄丸のようなものだったのでしょうか。またその頃は漢方薬にはまだエキス剤がなく、煎じて飲まれていました。臭くて苦いのが当たり前だったのでしょう。昭和50年代になってエキス剤が登場し、徐々に臭くて苦いイメージが緩和されていきます。


  これからも小説を読んでいて皮膚病や漢方に出会えればと思います。

 

 

 

2016.5.30記載

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コメント

小説の中の皮膚病。
面白い視点ですね。
水虫のイメージ?って。
改めて考えたことなかったけど、治療してもすぐまた再発するようなシブトイイメージでしょうか、ジメジメした、不快な?
いちど読んでみたいと思い、今日アマゾンで注文してみました。

コメント有難うございます。
水虫のイメージはまずは不潔なイメージだと思います。次にシブトイイメージかもしれません。
『水虫魂』では両方のイメージで描かれていたように思いました。

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