2019年6月29日 (土)

皮膚病雑記帳No.226

  • 裏に甘麦大棗湯、表に越婢加朮湯

  数回前のブログで甘麦大棗湯は経絡(けいらく)では心の陰経に働くので、小児の痒疹、特にアトピー性痒疹の上肢の内側(肘窩側)の皮疹に奏効します。ただ下肢の内側(膝窩側)にもある程度効いているのは漢方のアバウトなところかもしれません。これからは四肢の外側に効く表の処方を見つけたいと思います。と記載しました。

 経絡とは人体の気、血、津液(水)が運行する際の通路で、正常な気、血、津液(水)だけでなく、病邪もまた経絡を通って侵入、伝播して臓腑を侵略します。太陽があたる表が陽経、太陽があたらない裏が陰経に相当します。この陽経、陰経を意識した処方の選択が表と裏の治療に重要になります。

  甘麦大棗湯が四肢の内(裏)側の皮疹にかなり有効であることは多くの症例で経験しました。甘麦大棗湯は外(表)側の皮疹にはあまり有効ではないようです。そこで表に効く方剤の一つの越婢加朮湯を処方したところ有る程度効いているようです。

 越婢加朮湯は効能の分類では利水剤に属します。表に熱がある実証タイプに用います。経絡では太陽膀胱経に働くようです。アトピー性皮膚炎では皮疹が赤く熱を帯びていて浸潤、浮腫傾向の皮疹によく効きます。経絡から考えると外(表)側の皮疹には特に有効と思われます。越婢加朮湯以外にも外(表)側の皮疹に有効な処方が有りそうですが、しばらくこの方剤を使ってみようと思います。

2019.6.29記載 

2019年5月30日 (木)

皮膚病雑記帳No.225

  • にきびに処方する漢方薬

 にきび(尋常性痤瘡)は西洋医学的治療でかなり治るようになった皮膚病の一つですが、なかには治すのに漢方薬の力が必要なことが有ります。にきびに対する漢方薬は数々あり、症状に合わせて処方すればかなり有効です。有効な漢方薬をいくつか挙げてみました。

 清上防風湯。赤みの強い熱を帯びたにきびに用います。若い人で実証タイプの人に良い。
 十味敗毒湯。清上防風湯ほどではないが、実証タイプの人で化膿したにきびに良い。
 荊芥連翹湯。皮膚が浅黒く、慢性に経過して硬結が生じているにきびに良い。
 当帰芍薬散。虚証タイプで、色白、冷え症で青っぽいにきびに良い。
   桂枝茯苓丸。中間証から実証タイプで、的の広い、あたりはずれの少ない処方。
 桃核承気湯。実証タイプで便秘がちな人に良い。
 六君子湯。にきびが口囲にできている人に良い。口と胃腸はつながっているので胃腸に良い六君子湯が有効。

 清上防風湯、十味敗毒湯、荊芥連翹湯はいわゆる標治(皮膚に表れている症状を改善)の処方、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、六君子湯は本治(体質を改善)の処方になり、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯は駆瘀血剤で血の巡りの悪い人、六君子湯は補気剤で胃腸の悪い人に処方します。

 前回でアトピー性皮膚炎の漢方治療のポイントは、皮疹だけを診ずに体の中を診て治療することが重要と書きました。にきびの漢方治療でも同様のことが言えます。標治の処方を使いながら、本治の治療をしていくと、西洋医学だけでは良くならないケースに漢方薬が奏効することを経験します。

2019.5.30記載

2019年4月29日 (月)

皮膚病雑記帳No.224

  • チャート式皮膚疾患の漢方治療

 

 3月5日に東洋医学出版社から共著『チャート式皮膚疾患の漢方治療』が出版されました。漢方をよく使っている9名の皮膚科医によって書かれています。私はアトピー性皮膚炎、老人性皮膚瘙痒症を担当しました。数年前に鳥取大学に赴任されていた時にお世話になった柳原茂人先生は帯状疱疹の漢方治療を担当されています。アトピー性皮膚炎の方は数年前に東洋医学出版社の雑誌『漢方と診療』に掲載されたもので、老人性皮膚瘙痒症のほうは今回の出版のため、新たに執筆しました。

 アトピー性皮膚炎の漢方治療のポイントは皮疹だけを診ずに体の中を診て治療することです。チャート式では標治(皮膚に表れて症状を改善すること)、本治(体質を改善すること)に処方される漢方薬を夏場、冬場にわけてチャート式に分けて記載しました。西洋医学のポイントで攻める治療ではなく、患者さんそれぞれに応じたきめ細やかな治療ができるように書きました。標治では夏場では消風散、白虎加人参湯、越婢加朮湯など、冬場では温清飲、十味敗毒湯、当帰飲子などを処方し、本治では夏、冬かかわらず、気虚では補中益気湯、瘀血(血の巡りが悪い状態)では桂枝茯苓丸、脾虚では小建中湯などを処方します。

 老人性皮膚瘙痒症では標治では当帰飲子、温清飲などを処方しますが、標治のみではなくやはり本治の処方が重要で、腎虚では八味地黄丸、瘀血では桂枝茯苓丸、脾虚では真武湯を処方します。

 詳しくはぜひ医学書店で『チャート式皮膚疾患の漢方治療』を手に取って見ていただければ幸いです。

 

2019.4.29記載

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