2020年6月29日 (月)

皮膚病雑記帳No.238

  • オンラインでの学習と診療

 

 新型コロナウイルスの影響で人が集まる学会、講演会、検討会などがほとんど中止になっていて、学習する機会が減っています。自分でテキストや文献を読んで学習すれば良いのですが、これまで以上にモチベーションを上げるのはなかなか難しいのが実状です。

 そんな中で、時々ネットで製薬会社から送られてくる講演会を見るようにしています。夜のゴールデンタイムに配信されることが多いので、夕食時間と重なり、なかなか見るのが難しいのですが、興味のある企画は見るようにしています。

 また先日、これまで出かけて行って参加していた漢方の勉強会が、初めてオンラインで開催されました。個人の家や職場からそれぞれ意見を言えるので、これまでと同じような感じですが、臨場感がなく、他の参加者の顔もよく見えず、意見を言うタイミングがちょっと難しく結構戸惑いました。初めてのオンラインでの学習体験でしたが、これからこの方法での勉強会が続くようなので、次第に慣れていくでしょう。

 世の中、会社に出勤せず、自宅で仕事をするテレワークやネットでの会議がかなり普及しているようです。医療の現場でも同様に普及していくと思われます。ただ皮膚科診療に関しては、実際に診ないと診断できないこともあり、また漢方治療では脈診や腹診は触れないと不可能なので、オンラインでの診療に限界も感じているところです。

 

2020年629日記載

2020年5月30日 (土)

皮膚病雑記帳No.237

  • 桂枝茯苓丸

 よく処方している漢方薬の一つに桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)があります。駆瘀血(おけつ:血の巡りの悪い状態)剤の代表格で非常に応用範囲の広い処方です。

 3月に出版した『漢方の贈りもの』の表紙に駆瘀血のイメージ図を掲載しています。駆瘀血には他に当帰芍薬散、桃核承気湯、通導散、温経湯などがあります。桂枝茯苓丸をイメージ図の真ん中に大きな円で応用範囲の広さを表現しました、当帰芍薬散はより虚証、桃核承気湯はより実証、瘀血が強く、通導散はさらに実証、瘀血が強い場合に用います。温経湯は桂枝茯苓丸と同じくらいの中間証で、瘀血は桂枝茯苓丸よりやや強いイメージです。

 処方に際しては舌をよく診るようにしています。舌の色が紫色で舌下静脈が怒張している場合に瘀血と判定でき桂枝茯苓丸を処方します。また腹診では下腹部に抵抗や圧痛がある場合に用います。

 桂枝茯苓丸は婦人科領域でよく処方されています。子宮内膜炎や月経不順、更年期障害、その他、冷え症などに処方されます。また打撲症で内出血した時に早く出血斑が消えます。 皮膚疾患ではアトピー性皮膚炎、蕁麻疹、尋常性痤瘡(にきび)などに処方しています。皮膚疾患の漢方治療では標治(現在ある症状を改善すること)、本治(症状の元となっている体質を変えること)が重要です。桂枝茯苓丸は本治の処方になります。アトピー性皮膚炎では瘀血のある患者さんに本治としてよく処方します。なかなか良くならない蕁麻疹の患者さんに桂枝茯苓丸を処方して急に症状が出なくなった症例を経験したこともあります。尋常性痤瘡にはやや紫がかった(瘀血を現している)発疹に有効です。

 幅広く使える桂枝茯苓丸、頼りになる漢方薬です。

2020年530日記載

2020年4月29日 (水)

皮膚病雑記帳No.236

  • 帯状疱疹後神経痛の漢方治療、パート2

  5年程前の201511月に『帯状疱疹後神経痛の漢方治療』というタイトルで記事を書きました。帯状疱疹は皮膚科でよく診療する疾患の一つです。水ぼうそう(水痘)に罹った人がなり、胸背部や腰腹部に水疱、紅斑が出て、痛みを伴うことが多い、ウイルスが原因の病気です。抗ウイルス剤で治りますが、痛みが強い場合や皮疹が治ったあとでも痛みが続く場合(帯状 疱疹後神経痛(PHN))が問題になります。

  このPHNに対しては、私は冷えた体を温める麻黄附子細辛湯や桂枝加朮附湯などの附子 の入った方剤か、補中益気湯などの体力をつける補剤をよく処方しています。さらに福岡の平田道彦先生の痛みと瘀血(おけつ、血の流 れが滞ること)に関する講演を聴いて、瘀血を改善する方剤も有効なことがあることを知り、PHINの患者さんで、舌診で舌下静脈の怒張などの瘀血所見のある人に駆瘀血剤を処方したところ、痛みの軽減が認められたことがありました。

  最近読んだ日本医師会雑誌の4月号では、『痛みの診断と治療最前線』というタイトルで特集をしていました。その中に『疼痛性疾患に対する漢方薬の有用性』(佐賀大学医学部附属病院ペインクリニック・緩和ケア科、上村聡子、平川奈緒美先生)の記事が載っていました。「同じ帯状疱疹でもさまざまな病態がある。たとえば触るだけでも痛いというアロデニアという症状は治療が困難である。これを漢方的に考えると脊髄後角から皮膚に至るまでの経路がウイルスによる炎症の熱で焼かれ、乾いてしまったために、神経がむき出しになり感覚が過敏になったのではないかと推察する。そこに必要なには潤いであり、滋潤剤の登場となる。麦門冬、五味子、地黄などの潤う作用のある生薬を使用することで、この症状が緩和する。」と書かれていました。

  このような滋潤剤も適用のある患者さんに使ってみようと思います。また体の何処に皮疹が出たかによって経絡的に処方が異なることもあると思われ、処方の経絡的アプローチも試みたいと思います。

2020年4月29日記載

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